arusenpaiの日記

ある、先輩の備忘録兼日記 フィクション

突然の墜落

浮遊感と同時に視界がスローモーション下がっていった

落下していることを理解するのに時間はかからない

しかし落下を止める時間はかかってしまうようだった

目の前にあった鉄筋を掴むが、指のような細さであり、長く飛び出ているので体重を支えるのには不十分であった

落下のスピードは遅くはなったが止まらない

鉄筋は折れることなく曲がりほぼ180度曲がると落下も止まった

足元が膝下まで泥水に漬かっていた

体感時間でいうと長く落下していたが、落ちた距離はちょっとした段差ほどで2メートルもなかった

足元の泥水は深く、足場もないため

頼りない細い鉄の棒にしがみついて宙ぶらりんであった

凸凹のある壁をボルダリングするかのようにして何とか陸地に上がり落ちたところを見てみると

怪我がなかったのが不思議と思えるような深さと広さ、そして瓦礫や鉄骨が突き出ていた


浮遊感を感じたとき、何故か助かる気しかしなかった

靴も靴下も泥水でびたびたになりながら、落下した危険なところから遠ざかり、心拍が遅れてバクバクとしてくるのを感じた

勿論、落ちたのは故意ではないが走馬灯ってやつが見れなかった



時間がたてば靴も乾くし怪我もなかったので忘れていく事だろうが

あの感覚ってのは忘れないのだろうか


忘れてもいいが、忘れずにいたい

忘れたいが、忘れてもいい

これから落下に気を付けたいが、予期せぬ出来事とは起こってしまう

どうにでもなれと放り投げたいが

やはり、どうにかなりたくはない




そういったエゴの塊まり