arusenpaiの日記

ある、先輩の備忘録兼日記 フィクション

謎メモ供養

その日世界は終わりが始まった

 

彼は死んだ

 

彼の世界が死んだのだ
 

その日新しい世界が始まった

 

彼は生きた

 

彼は既に新たな彼の世界で生きていた
 

彼はそれでも生きた

この世で生きた

彼は生きることを否定せず死ぬことを肯定したが生きていた

 

彼が生きたのは彼の意思ではない

ただ呆然と呼吸をし食事を摂りし睡眠を取った

彼が死を望んだ訳でもない
 

彼を咎める者がいた

それは悪意ではない

彼を咎めるのは歪んだ正義であった
 

彼の意思は受け継がれる事となった

後世に受け継がれ

彼の子孫はそれを光栄な事として知るであろう
 

彼や見知らぬ隣人は見ず知らずの物事を善しとした

理解や納得をぜずとも

彼や異国の神達は常識を覆した
 

彼へなんとも素晴らしい称賛が送られた

すぐれている名誉として

彼へ下らない非難が送られる事となろうとも
 

彼と歩もうとした者はいなかった

同じ道を歩んでいようとも

彼と進んでいくにも関わらずに
 

彼より少なからず優れている者はいなかった

優劣が無かろうと

彼より大いに劣っていようとも
 

彼でも及ぶ事はなかった

この世の不条理に

彼でも絶望したのだ
 

彼しか伝えることが出来なかった

永遠の安寧を

彼しか伝わらないのに
 

彼とは一体誰であるか

その答えは未だない

彼とはあなたであるかもしれない

その答えはもう既に出ている